「個」を重視した生き方が増えているわけ

従来型の「縁」からの離脱者が増えたのは、
そこに不自由さがあり、「使い勝手」が
悪くなったからでしょう。

イエ、ムラ、カイシャの縁に属せば、
何かのときに扶助してもらえる
安心感はたしかにあります。

しかし、「長男」「嫁」「上下」等の役割に束縛され、
個人の望みなど聞き入れられない息苦しさがあります。

個性ではなく社会的評価で人が判断され、
不条理な因習にも盲目的に従わなければならない
不自由さもあります。

一見温かく見える関係も、内実は序列構造や
競争意識が渦巻き、身の置き所のない
窮屈さを抱える人も多いはずです。

「個」を重視して生きる人が増えたことは、
従来の社会の不の局面から解放されたいと
願う人が増加していることの証左でもあります。

とはいえ、その生き方は甘いものではなく、
「人生晩年での孤独」という課題があることが
近年になって露呈してきたということなのでしょう。

たしかに、「無縁社会」「孤族」という
負の側面だけを見れば、
「個」で生きることは恐ろしいことに思えます。

しかし、そこを拡大視して警告を発し続けたとしても、
元のままの「縁」に戻りたい人がどれだけいるでしょうか?

むしろ、課題があるなら整理し、従来の縁を
「使い勝手」のいいものに変えていくこと、
または他の縁の利用を考えていくことが
大切なのではないでしょうか。