旧来の縁を薄くさせてきた社会の変遷

戦後日本は、政府と銀行、
企業が相互に支え合って
経済成長を成し遂げてきました。

会社組織に所属し、
労働力の担い手となる男性は
終身雇用制と年功序列制度の恩恵により
安定収入を享受できました。

同時に会社組織に
自分のアイデンティティを同化させ、
週末まで会社との縁を
重んじる男性が増えてきたのです。

一方で家庭では専業主婦である妻が
家事、育児、介護の労働を一手に担い、
近隣や縁者との相互扶助など、
家庭と地域の献身的な奉仕に従事してきたのです。

ところが、このような典型的な日本型社会は
90年代に入って変わり始めました。

その背景には、雇用システムの変化と
働き方の多様化、都市化社会の進展、
女性の意識変革と社会進出、
情報化社会の進展などが大きく影響しています。

社会の変容に伴って人々の生き方、
家庭のあり方への意識も多様に変化し、
イエ、ムラ、カイシャの「縁」を重視しない
「個」を重視した生き方が徐々に増えてきました。

無縁社会」「孤族」という負の局面も、
まさにその流れのなかで顕在化してきたものです。