売主としての心構え

いきなり堅苦しい話になってしまいますが、
まずはあなたが売主となる際の心構えについて
考えてみることにしましょう。

いま所有している家や土地は親から相続したもので、
「不動産の売買契約の経験はない」という人も
いらっしゃるでしょうが、
多くの人は新築物件または中古物件として購入し、
過去に自分自身が買主だった経験があるはずです。

まずはその時のことを思い出してみてください。

新築物件を不動産業者から購入したか、
あるいは中古物件を個人から購入したかなどの
違いはあるにせよ、あなたが買主だった時には、
売主に対して「誠実な売主であること」
「問題があれば責任を持ってくれる売主であること」などを
求めたのではないでしょうか。

あなたが売主になるということは、
今度は立場が入れ替わって
あなた自身が誠実であること、責任があること、
正直であること、さらには段取りが的確であること、
取引が確実であることなどが求められるのです。

そんなことは言われなくても当然だと
感じられるかもしれませんが、家の不具合などの問題、
隣地との敷地境界の問題、構造物などの越境の問題、
擁壁の問題、隣人トラブル、家の中で起きた事件のこと、
あるいはマンションの他の区分所有者との間で
起きている問題など、本来であれば買主に対して
告知しなければならないことについて、
知らないふりで済ませようとする売主も少なからずいます。

売買を媒介する不動産業者がそれに気がつけば、
重要事項として買主に説明をするのですが、
売主が言わないかぎり不動産業者が
気付かないような問題も少なくありません。

家の購入希望者が現れ、契約をすれば○千万円が手に入る。
でも、これを言ったら目の前の○千万円が
ゼロになってしまうかもしれない…。

そのように悩んで躊躇する場面があるかもしれませんが、
嘘をついて、あるいは大事なことを黙ったままで契約をすれば、
すぐに発覚して大きな竹箆返しを受けると
考えたほうがよいでしょう。

問題の大きさによっては契約の解除や違約金、
損害賠償を求められることにもなりかねません。

不動産業者が売主の場合に比べれば、
個人売主の責任が大きく問われるケースは
少ないとはいえ、古本や古着、中古車などを
売るのとはまったく違います。

売ったお金が手元に残るか残らないか、
利益があるか損失があるかといったことは別にして、
数千万円の「商品」の売主としての自覚が求められるのです。

もちろん何ら問題点のないクリアな物件であれば、
あまり深く考える必要もないのですが…。